「酒は百厄(薬)の長?」 −21−
坂本 隆
第21回 アダルト・チルドレン 〜 機能不全の家族から傷〜
アダルト・チルドレン(AC)というのは、過去にアルコール依存症をはじめとした機能
不全の家族で受けた心の傷が深く残っており、生きる上での不自由さを感じている人たちが
自らに名付けた言葉です。
Sさん(32)は病院の看護師。3人同胞の長女ですが、彼女の父親にはアルコール問題が
ありました。父はまじめな公務員で職場での信頼は厚いものの、酒癖が悪くしばしば深夜
に泥酔して帰宅します。大声で叫んだり、時には家族とくに母に対して暴力をふるうので
すが、翌朝には何事もなかったかのようにケロッとしています。母親も時々顔に青あざを
付けていても誰も話題にしません。父のアルコール問題はあたかも存在しないかのように
扱われていました。長女である彼女は父のご機嫌をとるのが上手で、母を父の暴力からか
ばいつづけてきました。
職場でのSさんは働き者で、患者さんの世話をするのも苦ではありませんが、休みの日
は何をしたらよいのかわからなくなります。たまに同僚たちと遊びに行っても心から楽し
めずにいます。人との関係でも、上下関係が明確な場合はよいのですが、対等な関係の場
合にどことなくぎこちなさを感じます。恋愛にしても関係が深くなりそうになると自分か
ら身を引くところがあります。
機能不全の家族内には、独特のルールがあります。家庭内で起きた嫌なことは話し合っ
てはいけない、未来は予測できず信じてはいけない、嫌なことがあっても受け流さなくて
はいけない、悲しみや怒りを感じてはいけない、現状を打開しようと考えてはいけない、
などです。
そうした家庭で育った子どもたちは、認められようと努力して優等生になったり、親に
反発して問題児になったり、世話焼きをし続けたり、険悪な空気を和らげようとおどけた
り、波風を立てないようにじっとしていたり、いくつかのパターンをとるようになります。
いずれにせよ、自由に伸び伸びと育つことができずに、心に鎖をかけたままのことがあり
ます。そのことに気づいたACは心の鎖をゆっくりと外し、過去の機能不全の影響から逃
れることができます。
「ACは 心の鎖 解き放つ」

イラスト・成田 富子
(さかもと・たかし 藤代健生病院院長)
(「東奥日報」 2002.11.17 「家庭・暮らし」面「健康」欄に掲載)
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