デイジー川嶋の新世紀シネマエッセイ
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vol.037  2004.2.5更新

 よく「継続は力」と言われる。
「あおもり映画祭」も今年6月で13回目。今年の構想はこれからまとめに入るのだが、この12年間に出逢った映画人・映画関係者は膨大な数になる。
何度もやめようと思った俺を励ましてくれたのは、阪本順治監督作品のほとんどを手がけている映画プロデューサーの椎井友紀子さんだ。
阪本組とは青森県でロケした映画「傷だらけの天使」の時からの付き合いだが、最新作「この世の外へ〜クラブ進駐軍」の2月7日公開に先駆けて、俺の地元「シネマヴィレッジ8・イオン柏」においての特別試写会での舞台挨拶に、阪本監督と主演の萩原聖人さんがやって来た。

 阪本監督はデビュー作の「どついたるねん」以降、コンスタントに年に一本は発表し続けて来た。
浮き沈みもあったが、「顔」で各賞を総ナメにし成熟期を迎えた。その後もパワーが落ちることなく「KT」「ぼくんち」と、話題作を提供し続けて来た。
そして「この世の外へ〜クラブ進駐軍」である。なぜ、いま、この映画なのか。映画は短期間に作られるものではないから、企画段階では多分そう問われたはずだ。
そして、2004年。日本は戦後初めて武器を携えて自衛隊を国外に派遣した。イラク戦争はフセイン元大統領の拘束でも終わらず、未だ戦争状態である。そんな世界情勢が背景にあって、この映画はシビアさを増して迫って来る。

 太平洋戦争終結から2年。焼け跡の残る東京に楽器を抱えた若者たちが集まって来る。彼らは米軍基地クラブの雇われバンドマンとして生計を立てていた。
遅れて復員して来たサックス奏者・広岡(萩原聖人)は、軍楽隊時代の先輩・ジョー(松岡俊介)と再会し、5人編成のジャズバンド「ラッキーストライカーズ」を結成する。5人はそれぞれに癒えることのない敗戦の傷を抱えていた。だが眩い光に包まれたクラブは、目新しい食べ物や陽気な音楽に溢れている。複雑な思いに揺れつつも、彼らはジャズの魅力に惹かれて行く…。
進駐軍のクラブを舞台に、それがそのまま現在のイラクのような錯覚を覚えながら50数年前の日本を描き出している。
俺たち「戦争を知らない子供たち」世代は、この映画に登場して来る「世の中の価値観が360度転覆した」時の若者たちの子供たちの世代である(回りくどい言い方だ)。阪本監督は俺より一つ年上なだけ。なのにこのリアルさはなんなんだろう。
過去の作品を観ても、子供が重要な役柄で登場する。今回もとても魅力ある子役だ。この子供たちの視線こそ阪本監督の生い立ちとダブっているような感じがする。
萩原、松岡の他、オダギリジョー、村上淳というキャスティングも魅力だ。どこか懐かしいような風景。俺たちより上の世代の人はみんな泣いていた。感じ方が違うのだろう。ジャズ映画、青春映画としても楽しめるが、世代によって「戦争」をどう捉えるか、感じ方はさまざまだ。
俺には「KT」につながる阪本監督の反戦思想が読み取れたが、この映画は阪本監督としても萩原聖人さんとしても、代表作となるであろうことだけは間違いない。ぜひ、ご覧下さい。