デイジー川嶋の新世紀シネマエッセイ
バックナンバー
vol.038  2004.3.5更新

 映画は映画館で観る。この当たり前のことがビデオの台頭で変わり始めた。
映画をレンタルビデオで借りて自室で観る。カウチポテト族とも呼ばれたが、今では日常的な茶の間の風景だ。映画館で映画を観るのは都市部の若者層ばかりで、ヒットするのはハリウッド製のメガヒット作品ばかり。ビデオはDVDになり、テレビも地上波からBS放送、CS放送へと。インターネットや携帯電話からでも映画というソフトが観られる21世紀。そして、昔のスタイルの映画館は維持できずに消え去り、郊外型のシネコンが全国に出没する。

 この10数年に「映画」を取り巻く環境が劇的に変化した。そのことと無縁ではないのが、全国の地方から生まれた「映画祭」だ。予算規模が絶対的に違うので同列に語ることはできないが、全国最少予算規模の我が「あおもり映画祭」はこうした「映画館産業」の過渡期に生まれた。
この12年間、映画館は減少する一途だったが、昨年から一気に様相が変化した。逆に贅沢な環境になって来たのだ。「シネマヴィレッジ8・イオン柏」と「八戸フォーラム」が誕生して、西北五地域、八戸地域の映画ファンは小躍りして喜んだ。街から映画館が消えていた空白の時期を過ごしていただけに、画期的な出来事だった。

 弘前にあったマリオン劇場は全国的にも注目を集めたミニシアター系の劇場として、週替わりで次から次へと名作・佳作を上映して来た。そのマリオン劇場がなくなった時、ひとつの文化の灯が消えた思いだった。
ハリウッド製のメガヒット作品は勿論観たい。ただ、それだけじゃない世界の優れた映画が観たいのだ。日本映画でも、大手配給会社ではないインディーズの映画が観たい。そうした欲求が映画祭に駆り立てていた原動力でもあった。自分たちで上映しようという自主上映会。その集合体として「あおもり映画祭」は生まれたのだ。
あの頃、「櫻の園」や「月はどっちに出ている」など、あらゆる映画賞のベストテン上位を占めていた佳作が県内では未公開だったことが背景にある。

 時は流れて、現在の柏と八戸のシネコンは見事にあらゆるジャンルの作品を上映してくれている。大手直営のシネコンと違う点といえば、そうしたお客様の声にすぐに反応してくれることだろう。つまり、メジャー系とアート系をバランスよく提供してくれている。観切れないほどのスピードで映画ファンの欲求に応えてくれている。ちょっと前なら「やらなかっただろう」と思われる作品がごく普通に上映されて来た。
青森市内もシネマディクトがあるので、県内の主たる地区で、現在の東京の映画館の縮図のような上映形態が整った。田舎にいながらにして、都会人よりも効率よく話題の映画が楽しめている。

 今年に入って「ポロック・2人だけのアトリエ」を柏で観た。県内では見られないと思っていた作品だけに感動もひとしおであった。柏にはマリオン劇場にいたOさんがいる。彼女が企画している「シネマポケット」シリーズもいよいよ定着して来た。
シネマディクトで「ローマの休日・製作50周年記念デジタル・リマスター版」を観た。30年ぶりに大スクリーンで観て感動したが、マスターよりも美しい画面での再上映。新しい時代だから可能な話だ。

 そうして映画鑑賞に満足している一方で、素朴な疑問が沸いて来た。「果たして映画祭は必要なのか?」と。
企画運営している自分が「観る」ことに忙しく、不思議な感覚に陥っている。映画館興行の邪魔をしてはいけないので、うまくジョイントする方法を模索するものの、かつての「飢餓感」がないのだ。
念願の「映画を観る環境」が整った。しかし、ライフワークとして取り組んで来た映画祭の将来像が見えにくくなっている。
今年の「あおもり映画祭」は今後を占う意味で大きな転換期になるのかも知れない。しかし、やりたいことはまだまだある。もっともっと大きな映画王国になるためには。今年6月中旬、「@ff第13回あおもり映画祭」はどんな顔を見せてくれるのだろうか。