デイジー川嶋の新世紀シネマエッセイ
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vol.043  2004.10.8更新

 秋が深まりを魅せている。青森県の自然は素晴らしい。特に十和田湖・奥入瀬渓流の紅葉は見事だ。こんな風に彩りながら歳を重ねたいものだと考える俺も、既に40代半ばに差しかかった。歳をとると「死」というものを考えてしまう。そして「どう生きるか」と直面する。人生の後半戦は、いよいよ「自分が納得する」ことを自分の足と頭で考える時。誰のせいでもない。時代の流れでも社会の責任でもない。自分で生きる道を模索しなければならない。

 9月下旬に「わらびのこう/蕨野行」の上映会が青森駅前「ぱ・る・るホール」で開催された。企画したのは青森冠婚葬祭互助会の船橋社長。俺と同じ年の若き社長だが、この映画の素晴らしさを知って独力で突き進んだ。これに番地銘石の番地社長と青龍寺の織田副住職が強力タッグを組んだ。陰で支えたのは「あおもり映画祭」西村事務局長。
上映日の二週間前にキャンペーンで訪れた恩地日出夫監督がマスコミ各社を回ったパブリシティー効果もあって、昼の回、夜の回併せて1300名という驚異的な有料入場者を集めた。自身も高齢になった恩地監督が「青森のジジババッ、この映画を見て元気になれっ」とマスコミで煽ったこともあり、ジジババが大挙して訪れた。山形県庄内地方の方言が聞き取りにくいという側面はあったものの、青森のジジババたちは清々しい涙を流していた。
映画祭でも映画館でも、やはり若者層をターゲットにした作品が多い。高齢者用の企画も必要なのだとの思いを強くした。そして、高齢の恩地監督から若者たちはパワーをもらってしまったのだ。凄かった。

 そして、もう一人。日本映画界を支える大御所・山田洋次監督。最新作「隠し剣 鬼の爪」の公開が間近に迫って来た。10月30日の公開だが、いち早く試写会で観た俺は断言する。あまり映画賞には一喜一憂しないタイプの俺だが、この映画は間違いなく今年度のベスト1となるだろう傑作である。前作の「たそがれ清兵衛」が物凄い感動を呼んだ新しいタイプの時代劇だったので、「それ以上の感動は無理」と思っていたが、それ以上の感動だった。ゾクゾクするようなこの高揚感は何なのだろう。それでいて、山田監督の寅さんシリーズに共通する人情的なあたたかさ。日本映画が面白くなって来た。
若い感覚の作品も続々と作られている一方で、この老人(失礼っ)パワー。「伝統とは革新の連続である」と誰かが言った。そう。大御所たちもまた新時代の感覚を取り入れながら、日本映画の底力を発揮している。この秋、紅葉した日本映画に俺たちも高揚しようじゃないかっ。