デイジー川嶋の新世紀シネマエッセイ
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vol.055  2006.9.22更新

 今年、「@ff第15回記念あおもり映画祭」は凄かったらしい。と、終わってから紹介するのもナンですが(ナンなんだ)、紹介している余裕がないくらい走り続けていたので、詳細はこちらから。↓ (って、ごめんなさい)

  あおもり映画祭公式HP http://aff-aomori.com/top_index.html

 ということで、その後の動きをお知らせしよう。青い森ゴールドラッシュはまだまだ続いている。今夏、俺のそばに来た2本の日本映画。オヤジギャグはともかく、今度は西北五・津軽半島が舞台だ。長期ロケではないが、下北半島から始まったムーブメントがやっと俺の津軽半島までやって来た。
 特に暑かった今夏のある日、つがる市で待望の映画ロケが行われた。ロケ地は35℃。地元の俺が途中でフラフラして座り込むほどの炎天下、撮影された映画は「ピアノの話(仮題)」という坪川拓史監督の最新作だ。長編デビュー作「美式天然(うつくしきてんねん)」で2005年、「第23回トリノ国際映画祭」で長編部門グランプリ・観客賞をダブル受賞。今年6月には「第49回サンフランシスコ国際映画祭」にも招待された坪川監督が、突然つがる市(旧車力村)を訪ねて来た。弘前FC(フィルムコミッション)からの依頼で、地元の俺が高山稲荷神社を案内した。この場所はハリウッド映画の「SAYURI」のロケ地候補にもなったらしく、神秘的な日本の原風景が感じられる場所。ここにこだわりを持つ坪川監督の希望でつがる市ロケが実現したのだ。しかし、神社内での撮影でもあり、FC的なことは必要なかったので、表敬訪問してつがる市産のメロンを差し入れして帰るつもりだった。
 そしたら、ナント、役者としてそこにいたのは、伝説の若松孝二監督だった。60年代から70年代にかけて、ピンク映画全盛期の日本映画を支えた代表的な監督であり、「餌食」「我に撃つ用意あり」など、100本以上の映画を手掛けて来た超ベテラン。最新作「17歳の風景」では、5年前に起きた少年による「母殺し」事件を題材に現代日本を見据える。がん手術を乗り越えた監督の遺書とも言える作品で「少年を通して、天皇制、朝鮮問題など、映画監督として自分が言いたいことを語った」と打ち明けている。
 一度は逢いたかった伝説の巨人と俺が初遭遇したのは今年3月。「素敵な夜、ボクにください」の製作発表記者会見で上京した際、映画関係者がよく集まる新宿のバーで逢ってしまった。まさか半年後に地元でまた逢えるとは夢のようだった。携帯もつながらない場所での隙間の時間、いろんなお話を伺えた。
 そして、若松監督から渡された一枚のチラシ。「若松孝二に映画『実録・連合赤軍』を撮らせたい。」というキャッチコピーと過激なデザインのチラシ。「おぉっ!」最近の日本映画にはなくなった社会への挑戦と挑発が感じられた。浅間山荘事件など連合赤軍事件をモチーフとした商業映画は「光の雨」「突入せよ!」と二本ある。あの時代、何があったのか。俺たちには団塊の世代の苦悩と挫折がわからない。でもそれを誰かが描いても、そんなにドキドキしないと思う。でも、若松孝二監督なら話は別だ。社会学者・宮台真司さんは「何としても実現させたい。『社会なんて糞だ!」という感覚を若い人たちに再び明確に共有してもらうために」と結んでいる。
 それから間もなくして「銀河鉄道の夜」の映画ロケが弘前市、五所川原市、つがる市、中泊町で行われた。9月にロケして、10月21日にはロケ地「シネマヴィレッジ8・イオン柏」で先行上映されるというから早い話だ。デジタルカメラでの撮影と編集、デジタルプロジェクターでの上映が現実の話になった。俺がこだわって来たフィルム映画とは異なるが、果たしてどんな作品になるのか。デジタル映画の鬼才・秋原正俊監督の手腕に期待したい。劇中、津軽鉄道のストーブ列車が使用される。南部縦貫鉄道のレールバスは何度かスクリーンに登場しているが、遂に青森県の宝・津軽鉄道のストーブ列車が劇映画でデビューする。俺のふるさとは「何もない」というコンプレックスの塊だったが、実は日本のふるさと像でもある。映画人たちが注目している古くて懐かしくて、そして新しい世界をスリーンに映し出してほしい。
 いつの間にか始まり、アッという間に終わった2本の日本映画ロケ(もうえぇ中年!)。大した手伝いもしていないが、最近、逢いたいと思う人には不思議と逢えている自分に驚く(預言者だ)。こうなればいいと思ったことが必ず起こっている自分に驚く(教祖様だ、って)。深い思いは通じる。絶対にそうだ。多少のリスクはあっても、自分から行動を起こすことで、何かが変わる。やりたいことはやろうぜ。そうだ、そうだ!おぉー。
 昨年から続いた映画ロケのゴールドラッシュ。十和田市出身の作家・川上健一さんの原作「四月になれば彼女は」を映画化した「アオグラ」(小林要監督作品)が9月23日から県内3劇場(青森松竹アムゼ、八戸フォーラム、シネマヴィレッジ8・イオン柏)で全国に先駆けて先行公開される。七戸FCが協力したこの「青森青春グラフィティー」は、映画としては初めてのオール南部弁。内田朝陽が連発する「ばがこぉ〜」って流行るのかも。その川上さんの原作は他にも魅力的な作品が多く、既にもう一本の県内ロケが来年準備されているというから楽しみだ。
 今夏は弘前市出身の現代美術家・奈良美智さんと大阪のクリエイティブ集団「graf(グラフ)」が共同制作する展覧会「AtoZ」が弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫で開催され大きな賑わいを見せたが、並行してドキュメンタリー映画が撮られている。「NARA:奈良美智との旅の記録」だ。弘前市民150人が参加したこの映画は来年、劇場公開されるとのこと。
 今冬、青森市内でロケされた待望のカーリング・ラブコメディー映画「素敵な夜、ボクにください」(中原俊監督作品)は来年2月の全国公開だが、青森県内は1月に先行公開される。新しいメンバーで再び加熱するだろう「チーム青森」と青森市で開催される初めてのカーリング女子世界選手権大会。この素敵な滑りの中で俺たちも転がろうぜぇ(って、俺の頭の上で滑るなよぉ!)。