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帰る場所のない男と女と |
|---|---|
| <キャスト> 小泉今日子 浅野忠信 麻生久美子 尾美としのり 小日向文世 鶴見辰吾 椎名桔平 笑福亭鶴瓶 高橋長英 榎本明 香山美子 |
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| <監督> 相米慎二 |
「風花(かざはな)」とは
冬から春へと向かう晴れた日に、まだ雪の残る山肌を撫でて風に吹かれ飛んでくる細雪のこと。
ひらひらと風に舞い散る櫻の花びらのように、優雅だがまるで一瞬で消えるために降っているような儚い雪・・・
小泉今日子×浅野忠信、かつて誰も見た事のない二人が此処にいる。
主人公・冨田ゆり子を演じるのは、小泉今日子。都会に暮らす複雑な女性の心境、本人曰く『淋しくて、悲しくて、たくましくて、明るくて、揺れていて、数え切れないほどの感情を持っている女』を見事なまでに演じ切る。その姿に、誰しもがスクリーンに燦然と輝く「真の映画女優」の誕生を見て、喝采を挙げるに違いない。
そして相手役に、浅野忠信。おそらくはこれまででも最も学歴が高く性格の悪い(!?)今回の役柄は、『自分でも今まで観たことない表情が写っている』と自ら言うほどの新鮮さに溢れており、確かな演技力と共にまた新たな段階に突入した姿に出逢うことが出来る(特に酔っ払いシーンは必見)。
またゆり子の亡夫役に鶴見辰吾、母親役に香山美子、義父役に高橋長英と充実した出演陣が脇を固め、更に榎本明、椎名桔平、麻生久美子と豪華なキャストが、作品に鮮やかな彩りをもたらしている。
全編に満ち溢れる静けさと危うい官能・・・一流のスタッフが紡ぎあげる見事なアンサンブル。
監督は、名匠・相米慎二。デビューから20年にあたる節目の年、13本目の長編作品となる本作品は、ロードムービィーの傑作であると同時に、感度抜群の大人のラブストーリーに仕上がった。流麗なキャメラのリズムに乗せて、役者の息づかいをそのままフィルムに閉じこめる演出手腕が全編に冴え渡り、最後まで観る者の目を離さずにはおかない。また、主なロケ場所となった北海道の幻想的なまでに美しい風景が作品に一層の輝きを与えている。
原作は乱歩賞作家・鳴海章の同名長編小説『風花』。音楽は国際的に活躍するミュージシャン・大友良英のアクセントの効いたリズムパターンと、バリトンの名手・秋岡歐の奏でる柔らかな響きが、随所に絶妙な効果を上げている。
夢の如く現れては消えてゆく「風花」は、名匠の手によって結晶と化し、観る者の心の奥底に深く静かに溶け込んでゆく。
本作品は、人の生と死を最果てまでみつめながら、その先に輝く「光」を求める人々を癒し包み込む、希望と再生の物語である・・・。
STORY
互いの事も知らぬまま、帰る場所のない女と男は一路、北へと旅に出る。
東京、春の明け方・・・満開の櫻の樹の下で目覚めた澤野廉司(浅野忠信)は、二日酔いのためか隣にいる女が誰なのか思い出せない。その女、冨田ゆり子(小泉今日子)は言う「私のこと覚えてない?どうするの?北海道」
ゆり子は五年前から東京に一人で住んでいる。彼女はこの地で「レモン」というもう一つの名を持っている・・・風俗嬢だ。新宿の高層ビル群が見えるマンションの一室には、彼女の他には亀が一匹だけ。故郷には東京に来てからずっと足を運んでいない。幾つもの“想い”を置き去りにしてきてしまった故郷、北海道での数多くの出来事・・・夫との死別、残された借金、そして故郷の母に預けたままの一人娘。故郷に帰りたい、娘の顔が見たい、しかしその勇気が出せず、ただ流されるまま日々を過ごしていた。
しかし昨夜、廉司と一晩飲み明かした時に出てきた「北海道」という言葉がきっかけか・・・一人でも故郷に顔を出してみようと思い立ち、勤めているお店に休みを告げ、荷物をまとめ始める。
廉司はキャリア組の文部高級官僚だ。だが彼もまた東京で独り暮らしながら、毎晩毎夜、飲まずにはいられな怠惰な日常を繰り返していた。美樹(麻生久美子)という恋人は、一応いる。だが廉司のキャリアに惹かれて付き合っている彼女とは、心も体も満足に通い会わせる事が出来ない。ある晩、泥酔した廉司はコンビニで万引きをした事から、自宅謹慎を命じられる。廉司は「レモン」と店で出逢う。そして一晩飲み明かし、酔った勢いを借りて、一緒に北海道に付き合うと約束し、ゆり子の旅立つ羽田空港へと足を向けていた。彼女が誰かも思い出せないまま・・・
意を決して五年ぶりに娘に会いに行くゆり子と、すっかり酔いも覚めて悪態を吐きながらハンドルを握る廉司。性格も生活も旅の目的も全く異なる二人の、ぎくしゃくとした北海道ドライブが始まった。
しかし実家に辿り着いたゆり子は、親の反対から娘に会うことが出来ない。そして廉司の耳には、上司からの一方的な解雇通告が届く。「自分は世の中に必要のない人間なのかもしれない・・・」行き場をなくした「帰れない二人」を乗せた車は、まだ雪の残る山奥深くへと向かっていく・・・。